英語を書くのであれば Latin 文字とアラビア數字を使って左から右へ書く。日本語は長年の書き方の變化を結構保存してゐて、書字方向は上から下への縱書きと左から右への横書き、半世紀ほど前であれば又今でもトラックの側面等に右から左への横書きを使ふ。字の種類には先ず漢字が在り、漢字には略字を含め舊字體と新字体が在るし、慣れてゐない人間から見ると楷書體と草書體とが同じ字だと云ふ事は判りづらい。かな文字にひらがなとカタカナが在り、更に Latin 文字とアラビア數字も多用する。私は普段文を手書きしてゐ、先の內で日々使ってゐるのは、漢字 (新字体)、ひらがな、カタカナ、Latin 文字 + アラビア數字である。これに加えて私は「ヨコガナ」と「縦 Latin」と云ふ文字を使ってゐる。このヨコガナを紹介したい。
ヨコガナはかな文字であり、ひらがなやカタカナと同種のものだ。「ヨコガナ」と云ふ語をヨコガナで書くとかう成る。
ヨと書きコと書きカに濁點が附きナと書いてある。ヨコガナの字はひらがなやカタカナの字と一對一に對應する。
ヨコガナは私の知人が作った字で、私が使ってゐるものはそれとは幾つか字の形を變へてある。ひらがなの替はりに作られた文字だ。ひらがなは昔日本語を縦に連綿して書く樣に使はれ始め、縦に速く美しく書く事が出來る。ここ半世紀ほどで日本語が左から右へ橫に書かれるやうに成り、ひらがなも橫に書かれるやうになった。手書きでも橫である。この時迄にひらがなは活字體を基に作り直され、連綿せず一字づつ離して書く事が多く成った。かう成ったひらがなを速く且つ美しく書く方法は自明ではなく、各人が各人の工夫を凝らしてきた (丸文字はその工夫の一つであらう)。私の知人はそこにもう一つ、各人の工夫を編み出したのである。
ヨコガナはかなを連綿して書けるやう、Latin やキリルの筆記體を參考にしてかな文字を置き換へてある。對應表が有るから載せよう。
友人に依るもの。
私のもの。
一字づつ紹介するのも興味深いが、これはもう書けば覺えるのであるから、書例を載せる事で代へる。書例は Cosense に集めてある。
ヨコガナは好く出來てあり、書く者毎に字の形をそれなりに自由に出來るやうに成ってゐる。アの高さを私はタの高さ迄上げて書くが、友人はイと同じ高さで書く。ケの第一畫を友人はアラビア數字の 2 のやうに丸めるが、私は鋭角に角ばらせる。ニに在る s のやうな形は上から下ろしても好いし、下から跳ね上げても好い。ルの第ニ畫も同じく言へる。等。これらで字の印象は可成り變はる。辨別が出來る限りは書き易い形を見附けて書くのが好いと思ふ。