膨大な系や定理が有象無象に転がっている。此れ等の、こなれの悪い群れを、何とか経路を見付けようと悪戦している内に、次第に、何かが此れを動かしている様な影が見えて来る。其の影を追っていき、遂に、理論同士の橋すら渡る羽目に成り、少しづつ影を縫い合わせる途方もなさから、定理の群れを引き連れている、公理らしき物を掴む事が出来る。
批評とは、此う云う作業だ。
総体は、必ず総体としてのみ現れる。〈読む〉と云う事を洞れ丈やっても、批評には成らない。側面とか断面を、幾ら鋭く切り取って、薄く積んでいっても、無なのだ。幾重にも道を経、軈て、外から折り返して網の様に像を模る。其うしなければ、総体は無だ。断片なぞ猫に喰わせておけばよろしい。